焙煎(ロースト)とはコーヒーの生豆を炒る作業のことで、コーヒーの香りや味に非常に深く関わっています。コーヒーはコーヒー豆を焙煎しないと美味しくいただくことができません。
今回は焙煎について書いてみたいと思います。
コーヒー豆を焙煎するということ
コーヒー豆は生豆の状態では淡緑色をしていて、味や香りはほとんど無く飲むことができません。生豆を焙煎することで、豆は茶褐色や黒褐色へと変化していき、それと共に香りや苦味、酸味といったおなじみのコーヒー独特の風味が生まれるのです。
コーヒー豆は焙煎の時間や熱のかけ方の違いによって浅煎り、深煎りといった焙煎度合いがあり、コーヒーの風味が変化します。焙煎度による風味は一般的に浅煎りのものほど酸味が強く、深煎りになるほど苦味が際立ってきます。
通常、生豆には10〜12%程度の水分が含まれており、焙煎することで水分を4〜5%程度になるまで抜きます。この過程で生豆に含まれている成分が、化学変化することによって酸味や苦味といった風味を生んでくれます。
焙煎度はどれだけ加熱したかの程度を表す言葉で、日本では浅煎り、中煎り、中深煎り、深煎りといった呼び方をしており、またそれらをさらに細分化し、ライトロースト、シナモンロースト、ミディアムロースト、ハイロースト、シティロースト、フルシティロースト、フレンチロースト、イタリアンローストの8段階の分類法が広く一般的に使われています。
しかしながら、この分類には明確な基準はなく、同じ呼び方でも多少煎り具合が異なることもあるので、主観的な区分と言えるでしょう。また欧米ではイタリアンローストよりもフレンチローストのほうが深い焙煎度を表すこともあるようです。
焙煎度は8段階ありますが、1種類のコーヒー豆が8つの焙煎度で販売されていることはありません。理由としては浅煎りに向いているもの、深煎りに向いているものというふうに、その豆の個性があるためです。どの豆に対しどのローストが豆の風味をより一層引き出すことができるかを見つけることが大事なのです。
しかしこの産地のものはこのローストとは一概には言えません。同じ産地の豆でも、品種により異なったり、地域の標高や気候によっても異なってきます。そのため、どのローストが良いのかを判断するには、豆の特質・特徴を把握することが重要と言えるでしょう。
焙煎(ロースト)の8段階について
ライトロースト
8つある焙煎度の中で最も焙煎度の低いものがライトローストになります。
ライトローストは薄っすらと焦げ目がついているくらいで、やや黄色っぽい色をしています。香りはほとんど無く、酸味は非常に強く、苦味はほとんど感じられません。
このローストはカフェや豆の販売店でもなかなか取り扱っていませんが、コーヒー豆そのものの味を持っているため『カッピング』と言われるコーヒーのテイスティングの際に使用されています。近年サードウェーブコーヒーの影響で浅煎りのコーヒーを飲む人が増え、取り扱うお店も出てきています。
シナモンロースト
ライトローストについで浅い焙煎度のものがシナモンローストです。
シナモンのように黄色っぽい色をしていることからこの名前がつけられました。苦味がほとんど無く、良質な酸味をもつ豆なら、しっかりと特徴を引き出すことのできる焙煎度です。
焙煎が浅いのでライトロースト同様、販売しているお店はあまり見かけません。しかしながら、ライトロースト同様サードウェーブコーヒーの影響で人気が出てきており、最近では少しずつシナモンローストでコーヒーを飲む人が増えてきています。
ミディアムロースト
ミディアムローストの豆は薄い茶色(栗色)をしており、この焙煎度以降から見た目もコーヒー豆を彷彿させる色になってきます。
ミディアムローストは別名アメリカンローストとも言い、その名の通りアメリカンコーヒーを淹れるのに適した焙煎度です。酸味が中心の味わいですが、ほんのりと苦味もあるのが特徴です。日本では中煎りに分類されており、その名の通り真ん中あたりのバランスの取れた味わいを持つ焙煎度合いです。
ハイロースト
ハイローストはミディアムローストよりもやや深く焙煎したものになります。
色は深めの茶色をしており、ミディアムロースト同様バランスの取れた焙煎度です。酸味と苦味のバランスが非常に良く甘みもあるため人気があり、日本で好まれるスタンダードな焙煎度の一つです。
柔らかな口当たりとスッキリとした苦味が特徴のためクセがないため、万人受けする焙煎度と言えるでしょう。
シティロースト
シティローストはハイローストと同様によく使われる焙煎度です。
色は濃い茶褐色でカフェや自宅で多く使われています。酸味と苦味のバランスが非常に良く日本で多く好まれる焙煎度になります。またハイローストに比べ酸味は抑え気味でコクが感じられるのも特徴です。
この焙煎度まで進むとスッキリとした苦味というよりもコクのある苦味が出てきます。そのため苦味を売りにしているコーヒー豆は一層その良さが引き出されます。余談ですが名前の由来は『ニューヨークシティ』から来ていると言われています。
フルシティロースト
名前からも分かる通りシティローストをさらに深く焙煎したもので、日本では中深煎りに区別されている焙煎度になります。
色は黒茶色のような色をしており、シティロースト同様、日本で好まれる焙煎度です。酸味は少なく苦味とコクが引き出せれるので、コーヒーの苦味が好きな人にとっては非常におすすめな焙煎度になります。またコーヒーの香りが非常に強調されるので、その芳ばしい香りを楽しむこともできるでしょう。
エスプレッソといえば深煎りが主流でしたが、近年ではシティローストやフルシティローストもエスプレッソ用の豆としてよく使われています。またアイスコーヒー用の豆としても使用されています。
フレンチロースト
フレンチローストは黒っぽい茶色で表面に油分が滲んで艶が出てくる段階になります。
フルシティロースト同様、エスプレッソやアイスコーヒーに向いている焙煎度ですが、もちろんドリップコーヒーとして飲んでも美味しいです。
苦味とコクが強く、酸味は殆ど感じられません。その強い苦味とコクをもつことからクリームやミルクとの相性がよくカフェ・オレやウインナーコーヒーなどのアレンジコーヒーにも使いやすいです。
イタリアンロースト
イタリアンローストは8段階の中で最も深い焙煎度になります。色は真っ黒で焦げているような印象を持たれるかもしれません。
苦味は強烈で、浅煎りのとき感じた酸味は全く感じられないのがイタリアンローストの特徴です。他の焙煎ではなかった、焦げたような香ばしい匂いを楽しむことができます。
エスプレッソやカプチーノに使われており、ミルクや砂糖などで甘さをプラスして飲むことが一般的のようです。欧米ではイタリアンローストよりもフレンチローストのほうが深い焙煎度を表すこともあります。
以上が焙煎についてになります。
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